東京都知事の小池百合子さんが愛読書として紹介していたことで、一時期アマゾンの書籍売上ランキング上位にランクインしていた『失敗の本質』。小池都知事がらみで有名になる前から、気になっていたので手元にあったんだけどなかなか読む気にならず放置してあったのを、やっと読んだ。
内容としては太平洋戦争で日本が失敗したとされるノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦の6つを対象に、それぞれの詳細と失敗の原因に迫るというもの。読んだ印象としては日本軍に肩入れするわけでもなく、かといって自虐的になるわけでもなく中立的なスタンスで分析されていた感。なかなか読みごたえがあった。
事件は会議室で起きてるんじゃない!
ざっくりと、失敗の本質で言われていることは「組織はトップがダメだと目も当てられなくなる」ということ。日清・日露戦争で得た過去の栄光に酔いしれたまま、甘い算段と希望的観測ばかりが先行する戦略。現場からの意見を黙殺し無謀な指示を出す。そんなことが繰り返されていたような印象。
68ページの「ソ連第一集団軍司令官ジューコフはスターリンの問いに対して、日本軍の下士官兵は頑強で勇敢であり、青年将校は狂信的な頑強さで戦うが、高級将校は無能である、と評価していた」というくだりは、端的にその事実を浮き彫りにしてくれてる。
現在の企業経営の現場でも見受けられそうな状況に、不謹慎とは思いつつ少し笑ってしまった。組織が硬直的になり、変化することを忌み嫌うようになり、失敗しようが成功しようがトップは代わらない。そのような組織はお先真っ暗なんだろうなぁと、改めて思い知らされた気がする。
日本がボロ負けだった訳じゃない
読んでいて意外だったのが、旧ソ連やアメリカの司令官たちが日本軍に対して脅威を感じていたところ。フツーに教育を受けてきた私なんかは、「太平洋戦争」と聞くと「軍国主義に傾倒して、物量的に勝つなんて無理ゲーなのにアメリカに無謀に挑んだ戦争」みたいな印象を漠然と持ってます。が、戦略や戦術がカチッとはまっていれば、勝てていたという局面も少なからずあるんだなぁと。
「勝てば官軍、負ければ賊軍」という言葉の通り、歴史は戦争に勝った側からの目線で書かれるものなので、ドイツ・イタリアとつるんでた悪の枢軸国の一員としての日本と称されてもしょうがない部分はある。そんな感じの自虐史観もいいけれど、別の視点からも太平洋戦争を見てみると面白いかもなぁと思った。
武士道精神と日本人の美学みたいなものが近代戦に合わなかったのかも
ここからは完全に私見なんだけど、日本って近代的な戦争に不向きだったんじゃないかなぁと思ったりしてます。アメリカの空軍を怯えさせた日本の零戦。そのパイロットって、操縦技術を極限まで磨いて命を賭して敵機を撃ち落とす、そんな精神性を持っていたんだと想像できる。これって「道を究める」という日本人の大好きな考え方。で、そのベースには武士道精神が根強くはびこっているんじゃないかな。
ただ、現実問題としてはそんなジェダイマスターみたいなパイロットを短期間で大量に育成することは不可能。しかも、零戦一機に対してアメリカ軍は必ず2機以上で対峙するみたいな対応を取ってくるから、零戦を操るジェダイマスターの数もジリ貧になっていく。
アメリカはというと、未熟なパイロットでも十分に操縦できるような戦闘機を作って、バンバン戦地に投入してくる。そりゃあ勝てないよね。
合理主義が行き過ぎるのもどうかと思うけど、自分の特性を知りバランス感覚を持っていくことが大事だなぁと。ロシアワールドカップ第1戦で、半端ねぇ大迫選手がコロンビア戦の金星という嬉しい結果を生んでくれましたが、半端な私は中庸な生き方ができればいいかな、なんてことを思ったりしました。
1984年発行の本に、2017年流行語大賞のあのワードが掲載されていた!
かなり、どうでもいい情報なんですが、『失敗の本質』の本の中に「忖度(そんたく)」というフレーズが出てきてました。この時代から既に忖度するって使われてたんだなぁと思うと、なんだか感慨深いです。そして、流行語というのは必ずしも新しい言葉からのみ生まれるわけではないんだなぁと気づかされました。以上、どうでもいい情報でした!
失敗の本質―日本軍の組織論的研究
「なぜウチの会社は動きが鈍いのか?」と疑問に思ったら、読んでみるといいかも。解決法は転職しかないかもだけど、原因を見つけるヒントは得られそう。
文庫: 413ページ
出版社: 中央公論社 (1991/8/1)
ISBN-10: 4122018331
ISBN-13: 978-4122018334
発売日: 1991/8/1
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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