日本に住んでいる以上、地震とはうまいこと付き合っていかなければいけない。そんな風に感じています。南海トラフ地震や富士山噴火は遠からず発生することは歴史を見ても明らかです。
予測の精度が上がり、防災の準備を万端にし、被害を最小限に抑えて、復興をスムーズに進める。そのようにして向き合っていくのが現実的な対応です。そんなことを思っているときに、過去の日本人が地震をはじめとする天災にどのように向き合ってきたのかが気になりました。
その答えになりそうな本だったので、すぐ手に取りました。
著者の磯田道史ってどんな人?
磯田道史さんは、歴史学を研究する大学の先生。堺雅人さん、仲間由紀恵さん主演で映画化された「武士の家計簿」の原作者としてテレビなどで見かけることが多くなった印象です。僕も磯田先生を知ったのは歴史関連のテレビ番組でした。
テレビ見てて「磯田先生パネェなー」と思ったシーンがありました。母屋と別に蔵を持ってそうな、由緒ある家に保管されている古文書を磯田先生が読むというシーンです。漢字なのか平仮名なのかも判別できないくらいの崩し字で書かれた古文書を、磯田先生はサラサラと興味深そうに読んでいくんです。驚異ですよ。
古文書をダイレクトに読んでいけるのスゴイなぁと思ったのと、こんな感じで古い文書に日常的に接して研究されてるんだなぁとリスペクトが湧きました。
そんな磯田先生が書かれた本だから、余計読みたくなりましたよね。
この本には、どんなことが書かれているのか?
オードリーの若林さんがアメトーークの「本大好き芸人」の回で、『新書はタイトルに書いてあるテーマについて、ひたすら書かれている本』という名言を残していました。言い得て妙といいますか、まさにその通りです。
中公新書である「天災から日本史を読みなおす」も、そのタイトル通りの内容になっています。具体的にいうと、過去に起きた大きな天災(地震・土砂崩れ・高潮・台風・津波など)の被害の状況や政治経済・日常生活への影響、そこから学べる教訓がまとめられています。
豊臣政権崩壊のきっかけになったのも地震
僕が読んでて一番気になった部分は、「天正地震が豊臣秀吉政権崩壊の引き金になった」という所です。僕の浅はかな歴史認識からすると、智略に富んだ徳川家康は機が熟すのを待って天下を取った、とばかり思っていました。
その解釈も間違ってはいないのですが、秀吉が全力で家康を叩き潰すために動き出す直前に天正地震が起きた。地震被害の立て直しに人や金を割かなければいけないので、徳川攻めを断念した。その事実があまりにも意外だったから印象に残りました。
400年も続く江戸幕府を築いた徳川家康って、常に安全安心な道を突き進んできたイメージだったのが、地震のおかげで「あっぶねー!首の皮一枚つながったぜ!」という場面に出くわしていたとは。歴史のこういうエピソード、ほんと面白いです。
時代の価値観が有事の際の行動に影響を及ぼす
この本の中で、もう一つ気になった部分があります。それは「津波から非難する時に、年老いた母を助けるために幼い娘をあきらめた」という部分です。儒教的な考えが根強かったからか、「親を大切にする」ということが重んじられていた時代は、その判断が正しかったようです。
現代を生きる僕からすると、まったく理解できません。究極の選択に迫られたら、「母さんゴメン」って言って、幼い娘を助けると思います。これは極端な話ですが、普段から何を大事にしているかが、地震や津波が起こった際の行動に大きく影響します。
「まずは自分の命を守ること」そして、「一度避難したら、忘れ物や貴重品を取りに帰らない」。この2つを肝に銘じておこうと思いました。
この本はどんな人にオススメか?
昔の人々が災害にどう向き合ってきたかを知ることで、現代の私たちの防災に生かせる部分は思った以上に多いです。地震や津波などの対策をする際に「どのような心構えでいればいいのか?」を知っておきたい方にオススメの本です。
天災から日本史を読みなおす – 先人に学ぶ防災
新書: 221ページ
出版社: 中央公論新社 (2014/11/21)
言語: 日本語
ISBN-10: 4121022955
ISBN-13: 978-4121022950
発売日: 2014/11/21
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