混沌の海に溺れて、もがき苦しむがいい!
30ページくらい読んだときに思ったのが、「この小説、英語に訳せないだろうな」ということ。グーグルの翻訳機能とか、目覚ましい発展を遂げているけど、それでもこの文章は無理だと思う。なんで翻訳頼まれた訳でもないのに、そんな事思ったのか?そこにも理由らしきものはあって、昨今の人工知能やらディープラーニングやらに脅威を感じていることの裏返しみたいな。
漢字の音のイメージから文章を紡ぎ出すとこ秀逸だった。ラップみたいに音で繋げた漢字のそれぞれの意味で連想していく。表意文字を母国語にしている人の特権だなぁと、誰に対してということなく鼻が高くなる。
何かしらの意味付けをしようと試みるのだけれど、全て拒まれる。それでも狂気と禍々しさだけは、文章の端々から漏れ出てきている。そんな感覚におちいった。そんな理不尽な思いをさせられたにも関わらず、久し振りに文学ってサイコーだなって思った。
「わたしが絶対に薬もお酒もコーヒーさえも飲まないのは、自分ではコントロールできない化学変化が身体の中で起こるのが恐ろしいからだった。」というくだりに、へぇーと思った。私はどちらかというと、ときどき鋭敏になり過ぎる感覚を緩めるためにビールを飲むから。真逆の発想。
「混沌の海に溺れて、もがき苦しむがいい!」と言われ、暗黒の海に突き落とされたような読後感でした。
聖女伝説
アマゾンで『聖女伝説』って検索すると、この本以外はアダルトな商品が並びます。なんてこった、パンナコッタ。
文庫: 282ページ
出版社: 筑摩書房 (2016/3/9)
言語: 日本語
ISBN-10: 4480433449
ISBN-13: 978-4480433442
発売日: 2016/3/9
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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